終点と始点 〜撃墜〜


 戦場というのが殺るか、殺られるかの舞台である以上、撃墜は常の出来事である。軍人とはそれを理解し、戦場に赴く者達である。そして、彼はそれを理解してした。同時に「今は自分が殺られる番」であったことも。こうなるのであれば、あの時、ガラにも無く深追いするのでは無かったのだと、後悔の念がつのっていた。
 その白き魔獣は、その姿を成していなかった。頭部は首元からえぐられ、右手首はちぎれ、左の二本の槍は砕け、次にコックピットを貫かれるという瞬間にバランスを崩し、自由落下を始めたのである。その白き魔獣に対峙していた者は、安堵と後悔に駆られながら、それが視界から離れるまで見送っていた。

 今、自分はどこにいるのだろう?

 あれは悪夢だったのだろうか?

 悪夢だと割り切れれば楽だったであろうが、現実とは酷なものである。だが、ふとこう考えている自分は可笑しいと理解できた。
 「・・・!?生きているのか?」
 まず手首を動かしてみる、正常に動いている。足も、首も。衝撃がきつかったらしく、全体に痺れが残っている。とりあえず生きているのだと喜ぶのは外に出てからにしようと、コックピットを開く。

 眩しい。こんな当たり前のことを当たり前に感じれないのが不思議だった。
 ここはどこかの森林、落ちてきたという証拠に木々や葉が散らばっている。
 初めて自機の状態を目の当たりにして、言葉を失った。先ほどの戦闘で受けたダメージに加え、落下の影響で尾部が完全に破壊されて横たわっている。こういう風になりながらも自分を守ってくれたのだと知ると、涙が頬を伝っていた。

 哀愁にふけっている場合では無い。急いで周辺を探索してみる。レーダー機器が破壊されているのでは救助にも来てもらえないでは無いか。他に撃墜されたゾイドのパーツを使えば通信機程度なら修理できる。



 だが、これが予想外の戦果となった。共和国の廃棄した工場を発見したのだ。中には通信機器はもちろん、未完成のブロックスも発見したのだ。
「おそらく、戦火を逃れる為に重要なものだけ持って撤退したのだろう。」
 隊長らしき男が指示をしながらそう言っていた。しかし、そんなことより大切なことがある。
「本当に修理できるのか!?」
「もちろんです。コックピットとコアブロックが現存しているので問題ありません。右手首はブロックを装着し、応急再生、装備を行います。左手部に関してはマグネイズスピアの破壊のみなので腕部にダメージはありません。頭部もパーツチェンジのみで・・・」
 難しい用語は聞いてもわからないな、と改めて自機を眺めておく。
 偶然にもエクスシザーズも無事だったらしい。
「・・・作系統等の後遺症的問題は若干ございますが、これだけのブロックスがあれば問題無いでしょう。で、どのような装備をなさるんですか?」
「え?」
 いきなり現実に戻された。自分の機体なんだから、よく考えて・・・
「あれで、お願いできるか?」

・・・
 彼、オリヒカはコックピットに座りながら言った。「もう、撃墜させないからな。」と。
「オリヒカ!お前の注文した装備以外に、さっき説明した装備があるからな、注意しろよ!!」
「了解!オリヒカ機、発進する!!」
 白い体に緑のパーツという異形な魔獣。周囲には「この、いかにも応急処置してっていうカラーが良いんだ!」と言っている・・・がこれはもう撃墜されるなという自分自身への戒め。

 こうして後に「蒼天の亡霊」と言われる第一歩となる戦場へ、彼は飛び立った。


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