「
敗北者 〜演舞〜
」
ヘリック共和国軍の輸送用ホエールキング内ではエマージェンシーコールが鳴り響いていた。
それを聞き、慌てるもの、やはりと感じるもの、戦いへの興奮が昂ぶるもの、あるいは、さらに異なる感情が起きるものもいるだろう・・・
しかし、どのような感情をもっていようが、戦場に出れば、全員に生きるか死ぬかの選択が与えられる。
そして、それにはその誰もが逆らうことができない。
「オリヒカ、下がれ!」
「何?・・・ぅわっ!」
オリヒカの機体の横をガイロス軍のレドラーが横ぎる、そして、もう一度狙いを定めようとした時、ジョーカーのマグネイズスピアに刺され、撃墜された。
「すまない、助かったぜジョーカー」
全員、先に進むぞ。
ジョーカーがそうジェスチャーを送ると、オリヒカもそれに続いていった。
ロックオンのできないオリヒカの機体だが、カメラには映る。なので上級レベルのパイロットともなればロックオンせずとも攻撃を当てようとすることができる。
今のレドラーだけでなく、今にいたるまで数度かすられている。
俺はこんな前線にたつ立場だったっけ・・・
そんなことばかり頭に浮かびながら。
それでも、チェーンソーで近付く敵を切り裂きしながら、目標のホエールキングに近付
いていった。
その時、彼らに迫る一体のバスターイーグルがいた。共和国軍のティアナの搭乗機である。
今の彼女の眼には仇である“蒼天の亡霊”と呼ばれるオリヒカしか入っていなかった。
「こいつ・・・俺だけを狙っている?」
誰が見てもわかるほどに集中的な攻撃だった。
そこでジョーカーは敵の援護の可能性も考慮して、この場はオリヒカに任せて、残りのメンバーで早急に目標の破
壊に向かった。
戦闘開始から数十分・・・
兵士から見れば数時間に匹敵する時間を経て、ジョーカー達はホエールキング内部に侵入、そこで目標と思われるコンテナを発見。
収容されていたパーツ類を破壊。
そして内部からの攻撃に備えることができなかったホエールキングはたやすく撃沈された。
「なんだ、もう終わったのか?じゃあ、今回はこれで帰れるんだな?」
そう心底嬉しそうに尋ねるオリヒカに脱出したてのメンバーはため息を漏らす。
「ところで、先程のバスターイーグルは?」
団員の一人がそう聞くとオリヒカは「首とキャノンを切り落としたところで逃げられた」と言った。
何はともあれ、他の班も、騎士団に与えられた任務をこなし、帰艦していった。
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